*おたかのシネマDEトーク
今日は「 ノマドランド 」をご紹介しました。
監督:クロエ・ジャオ
キャスト:フランシス・マクドーマンド
デヴィッド・ストラザーン
リンダ・メイ
シャーリーン・スワンキー
他
3月19日に発表が行われた第44回の日本のアカデミー賞は、最優秀作品賞が「ミッドナイトスワン」、最優秀監督賞が「Fukushima50」の若松節朗監督、最優秀主演男優賞が「ミッドナイトスワン」の草彅剛、最優秀主演女優賞が「MOTHERマザー」の長澤まさみ、最優秀助演男優賞が「Fukushima 50」の渡辺謙、最優秀助演女優賞が「浅田家!」の黒木華といった結果で、「Fukushima 50」が最多6冠に輝いて終わった。
そして、4月26日に授賞式が予定されているアメリカのアカデミー賞。そこで、作品賞の大本命と言われているのが、アジア系女性監督の初ノミネート作品のこの「ノマドランド」。
気鋭のジャーナリスト、ジェシカ・ブルーダーのノンフィクションを原作に、現代のノマド(遊牧民)たる高齢の車上生活者の生きざまを描いたロードムービー。
既に2020年のベネチア国際映画祭で金獅子賞、2020年のトロント国際映画祭で観客賞に輝いており、この2冠達成は史上初の快挙ということで、アカデミー賞に一番近い作品と言われているわけ。
監督は北京生まれでイギリスのブライトン育ち、その後アメリカに移住して政治学と映画制作を学んだというクロエ・ジャオ。
2017年、2作目の長編「ザ・ライダー」でカンヌ国際映画祭をはじめ、数々の映画祭で受賞し、今後はマーベルスタジオの「アベンジャーズ」に続く最新ヒーロー超大作「エターナルズ」の監督にも抜擢されているという、今注目の監督。
そして、「ファーゴ」と「スリー・ビルボード」で2度のアカデミー主演女優賞に輝くフランシス・マクド―マンドが主人公のファーン役を演じると同時に、製作者としても深くこの作品に関わっている。
周りのノマド達、リンダ・メイ、スワンキー、そして彼らが尊敬するボブ・ウェルズらは、それぞれ本人が演じていて、よりリアルな生活感を描き出している。
ネバダ州エンパイアはかつて石膏採掘の鉱山があり栄えた町だったが、経営困難になり閉鎖され、住民はすべて退去、郵便番号さえなくなり、町とそこでの住民の暮らしは消滅した。
60代のファーン(フランシス・マクドーマンド)は、荷物をトランクルームに預け、わずかな身の回りの荷物を“ヴァンガード(先駆者)”と名付けたフォードエコラインに積み込み、ノマドの世界に身を投じる。
冬場はアマゾンの配送センターで働き、その後は、国立公園のキャンプ場、ドーナツショップ、ビーツの収穫など、季節労働者として、いろいろな仕事場を渡り歩く。ノマドのメンター的存在のボブ・ウェルズが砂漠の外れで開く集会に参加したり、そこで出会ったデイブ(デヴィッド・ストラザーン)と共に働いたりもする。孫ができるからと息子の元へ帰った彼に招かれ、感謝祭を一緒に過ごし、このままここで一緒に暮らさないかとプロポーズされたり、車の故障を直すためのお金を借りに訪ねた姉の家でも、ここに住めば?という誘いを振り切って、元のノマドの生活に戻っていくファーン。
いつも楽しいことは家の外にあった・・・と言い、かつて代用教員として働いていた時に教えた子供にショッピングセンターで出会った時に“先生はホームレスになったの?”と訊かれ“ホームレスじゃなくて、ハウスレスなのよ”と答えるあたりに、その生き方の真髄が見えて、心に刺さる。
本物のノマドの人たちが出ていることで、ドキュメンタリーとフィクションの境目が、かなりファジーなので、よりリアルに迫ってくる彼らの生き方。
自分で選んだ自立した生き方をし、そしてどう死んでいくのかも含めて、生きるということは何か?を問いかけてくる映画なので、是非対峙し、自分なりの答えを見つけてほしいです!
★おたか★