おたかのシネマでトーク
今日は「レ・ミゼラブル」をご紹介しました。
監督 ラジ・リ
出演 ダミアン・ボナール、アレクシス・マネンティ、ジェブリル・ゾンガ、ジャンヌ・バリバール、イッサ・ペリカ、アル=ハサン・リ
“レ・ミゼラブル”と言えば、ヴィクトル・ユーゴーが1862年に書いたフランスの大河小説。
世界中でロングラン公演されてきた舞台のミュージカル、それをトム・フーパーが映画化したミュージカル映画は2012年に公開され大ヒットし、最近NHKでドラマも始まり・・・と、ここへきて又注目のこのタイトル。
けれどこれは、タイトルは同じでも、内容は全く違う映画。
今年のカンヌ国際映画祭であの「パラサイト 半地下の家族」とパルムドール賞を競い、審査員賞に輝いたフランスの新鋭ラジ・リ監督の映画。
監督自身のリアルな体験も含め、今もその地に暮らす監督が社会が内包する問題を緊迫感とスタイリッシュな映像で描き出し、アメリカにおけるプロモーションをあのスパイク・リーが買って出たという話題作。
舞台となるのはヴィクトル・ユーゴーの傑作「レ・ミゼラブル」で知られる、パリ郊外のモンフェルメイユという町。
貧しい黒人が多く、ムスリム同胞団と麻薬の売人が縄張り争いを繰り広げている犯罪多発地区。
のどかな前任地からこの地区の犯罪防止班に異動してきた警察官のステファン(ダミアン・ボナール)。
指導役の、白人で人種差別主義者のクリス(アレクシス・マネンティ)と、アフリカ系の黒人のグワダ(ジェブリル・ゾンガ)と共にパトロールに出かけると、複数のギャングが緊張関係を保ちながら暮らすこの地は、子供に至るまでが何らかの犯罪に巻き込まれ、又、犯罪を犯しているというミゼラブル(悲惨)な町であることを体感する。
そして、町に来たロマのサーカス団からライオンの子供が盗まれた事件をきっかけに、民族間の対立も表面化し、黒人とロマは一触即発の状況になる。
イッサという少年が犯人ということをつき止めた警官と、イッサを渡すまいとする少年たちとの衝突で、グワダが至近距離からゴム弾を発射し、イッサはひどく傷つく。
その一部始終をドローンで撮影していた少年がいて、警官たちはその証拠を奪おうと少年たちを追う。
フランスの郊外には、工業地帯の労働力としてアフリカの旧植民地から多くの移民労働者が移り住んだ。
フランス生まれの移民の2世3世も暮すエリアは、1970年代以降、貧困化と治安の悪化が進み、多くの問題が生まれてきた。
そんな郊外の町を舞台にした作品が1980年代半ばから沢山作られるようになり“郊外映画”なるジャンルも確立され、マチュー・カソビッツやジャック・ドワイヨンといった有名監督だけでなく、自らも郊外団地で生まれ育った移民自身による作品も増えていった。
マリ出身で、モンフェルメイユで育ち、今もそこに暮すラジ・リ監督もそんな一人で、これは彼の長編映画監督デビュー作。
そしていきなり、カンヌやアカデミー賞でも国際長編映画賞にノミネートされるなど、世界中で多くの賞に輝き、50か国ほどでの配給も決まった。
現代社会の闇の部分をリアルに描き出し、その現実を多くの人に見てもらい、知ってもらうことが、映画を作った目的だと、2月に来日しプレミア試写会でも語っていたラジ・リ監督。
怒涛のラスト30分。そしてなんと!のラストシーン!!
全く演技経験のない子供たちをキャスティングして、些細な出来事がやがて取り返しのつかない方向に進んでいってしまうというプロセスを、スタイリッシュな映像でドキュメンタリータッチで描きあげた社会派ドラマ。
スゴイです!!
★おたか★
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