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  • 2020年7月15日(水) 17時29分 おたかのシネマDEトーク

    7月15日*おたかのシネマでトーク「MOTHER マザー」

    *おたかのシネマでトーク

    今日は「 MOTHER マザー 」をご紹介しました。

    監督:大森立嗣

    キャスト:長澤まさみ
         奥平太兼
         夏帆
         皆川猿時
         仲野太賀
         他

    本当に、後味の悪い映画。
    しかも2014年、埼玉県で実際に起きたショッキングな事件がベースになっているというから、本当にやるせなくて辛い。

    シングルマザーの秋子(長澤まさみ)は、男たちと行きずりの関係を持ち、お金が無くなれば息子周平(幼少期:郡司翔)を連れて実家に無心に行き、お金を手にするとパチンコに・・・というその日暮らしに明け暮れていた。
    でもある日、度々の無心に業を煮やした母雅子(木野花)はお金を渡さず、追い返す。
    ゲームセンターでふてくされているとダンスゲームでやけにはしゃいでいる一人の男と出会う。
    その、ホストの遼(阿部サダヲ)と一緒に生活するようになってからも、相変わらずの毎日で、周平のことはほったらかしで、遊びまわる日々。その日常は、妹冬華(浅田芭路)が生まれて、周平(少年期:奥平大兼)が17歳になっても、変わらなかった。

    いわゆる毒親と虐待されている息子という構図なのだけれど、時には舐めるように息子を可愛がったり(実際、動物のように、息子の膝の傷を舐める!)、息子も母親のことが大好きだったりと、共依存の関係にある秋子と周平は、お互い離れられない存在だった。

    簡易宿泊所を紹介してくれたり、なにかと面倒を見てくれる児童相談所の職員亜矢(夏帆)から本をもらったり、勉強することの楽しさを教えてもらったりして、周平が学校に行きたいと言った時も秋子は許さず、遼の借金取りから逃げるために、又、夜逃げして亜矢の前からも姿を消してしまった親子。
    あとは、悲劇に向かってまっしぐらに突き進むしかなかった・・・。
    孫が祖父母を殺して金品を奪うという凄惨な事件、母親は、どうかかわっていたのか・・・?
    母親役の長澤まさみが、役に全く感情移入できなかったというのも納得のこの映画。

    企画プロデュースをしたのは、あの「愛しのアイリーン」や「新聞記者」などの、社会のひずみを抉り出す作品を世に送り出している“スターサンズ”という会社の河村光庸と佐藤順子のコンビで、脚本を書き監督をしたのが大森立嗣。
    「さよなら渓谷」「光」「日日是好日」、そして2019年の「タロウのバカ」という映画では、荒々しい衝動を抱えた少年たちの明日なき彷徨を描いた作品中に、シングルマザーの育児放棄や学校に行けない子供たちを登場させていた。
    「タロウのバカ」の主演のYOSHIと同じ2003年生まれの新人、奥平大兼を今回オーディションで抜擢したこともあり、あの時、あの映画で衝撃を受け、割り切れないものを感じたのと似た感覚を、今作でも覚えてしまう。
    しかもあの映画から1年もたたず、再び善悪や道徳を超えたところにある人間のコミュニケーションを描き出した大森監督のエネルギーは、すごいと思う。
    しんどいし、後味の悪さはあるけど、これは今、観るべき作品なのかもしれません!

    ★おたか★