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  • 2020年8月5日(水) 17時52分 おたかのシネマDEトーク

    8月5日*おたかのシネマでトーク「海辺の映画館―キネマの玉手箱」

    *おたかのシネマでトーク

    今日は「 海辺の映画館―キネマの玉手箱 」をご紹介しました。

    監督:大林宣彦

    キャスト:厚木拓郎
         細山田隆人
         細田善彦
         吉田玲
         成海璃子
         他

    今年の410日、82歳で亡くなった大林宣彦監督の遺作。
    本来この日にロードショー公開される予定だったのが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて延期が決まり、731日の公開になったのだ。

    2016年8月にステージ4の肺がんが見つかり、3か月の余命宣告を受ける中で、抗がん剤治療と不屈の精神力で映画制作を続け、前作「花筐/HANAGATAMI」(201712月公開)を完成させ、その後故郷の尾道で久しぶりに撮影しようと、この作品の企画に着手。
    近年の戦争三部作で、反戦への思いを描き続けてきた大林監督。7歳で終戦を迎え、以前から、広島の原爆を描くことが使命だと語り、平和のために役立つことを芸術で表現したい、そのために生かされているのだからと、広島での巡演中に被爆し全滅した移動劇団“桜隊”を中心に、いろんな戦争の時代に生きる人々を描いたこの作品。
    モノクロ、総天然色、無声映画、トーキー、時代劇、アクション、ミュージカル・・・と、様々な映画表現を使って、反戦、平和への希求が綴られていくもので、モチーフとなっているのは、中原中也の詩。

    尾道の海辺にある映画館“瀬戸内キネマ”が閉館を迎え、最後の日にオールナイトで日本の戦争映画特集を上映する。
    その夜、突如として稲妻の閃光に包まれた映画館で、観客の3人の若者がスクリーンの中の世界へとタイムリープして、戊辰戦争、白虎隊、日中戦争、第二次世界大戦、沖縄戦、そして原爆投下前夜の広島など、それぞれの”場所“と“時”と”そこに生きる人々の生活”を、戦争を知らない世代の3人が体験していくというストーリー。

    ファンタジーの要素もあり、冒頭、いきなり宇宙船に乗った高橋幸宏の周りを鯉が泳ぎ、常盤貴子はじめ、主要なスターたちがタップを踏む・・・というだけで、もはやついていけないと思う人もいるかもしれない。
    大林監督は、これが多分遺作になるであろうことは分かったうえで、ありったけの映画への愛を詰め込んだのだ。
    登場する人物、それを演じる俳優女優(まさに監督の作品にゆかりのキラ星のごとき面々)、エピソード、色彩感覚から、全ての面で、“Too much”の感あり。

    ニセのインターミッションをはさんで、179分の大作なのだが、不思議なことに観終わってからも、長いんだけど長すぎるとは感じなかった。
    戦後75年、原爆の日に近い8月にこの作品に出会えたことには、意味があったように思う。
    でも、レイトショーで観たので、家に帰り着く頃には日付が変わっていたのだが、なんといきなり部屋の片づけがしたくなった。
    夜中なのに、ゴミ袋をとりだして断捨離まで始めてしまった。
    それはまるで頭の中のとっ散らかりに呼応するかのような衝動で、今観たばかりのこの映画が消化できていないのがよく分かった。
    大林監督から渡された遺言のような“思い”、受け止めて理解するには、ちょっと時間がかかりそうだ。

    ★おたか★