おたかのシネマでトーク
今日は「あん」をご紹介しました。
監督 河瀬直美
出演 樹木希林、永瀬正敏、内田伽羅、市原悦子、水野美紀
今年も、最終週は懐かしの映画を紹介する“オタシネ クラシックス”をお届けしようと思います。
で、今月は、この1月12日に82歳で亡くなった市原悦子さんと、昨年9月15日に75歳で亡くなった樹木希林さんの、最初で最後の共演作品、2015年の「あん」を取り上げました。
作家で詩人で歌手で道化師でもあるという、ドリアン助川さんの原作を、河瀨直美監督が映画化。
書こうと思い立って20年ぐらい、書き始めてからも7~8年をかけ、12回も書き直したという原稿、出版に際しても大手の出版社にはことごとく断られ、2013年にやっとポプラ社から世に出たというこの小説。
でも、その後はとんとん拍子で、フランス、ドイツ、イタリア、イギリスなど12の国で出版され、映画になって2016年、カンヌ国際映画祭の“ある視点部門”のオープニング上映で絶賛され、その後世界45か国で公開されるなど、大いに話題をまいた作品になったのです。
満開の桜で始まり、満開の桜で終わるこの映画、桜には死の匂いが付きまとう、とは河瀬監督の弁。
小さなどら焼き屋“どら春”の雇われ店長千太郎(永瀬正敏)が出したアルバイト募集の張り紙を見てやってきた年配の女性、徳江(樹木希林)。
高齢者にはちょっときつい肉体労働だからと断っても、手作りの餡を持って再びやって来た彼女の、お手製の餡のあまりの美味しさに、餡作りに来てもらうことになり、その美味しさが評判を呼び、行列の出来る人気店に。
カナリアだけが友達という中学生ワカナ(内田伽羅)にも慕われ、餡作りだけでなく、接客もし、生き生きと働く徳江だったが、ある日オーナー(浅田美代子)がやって来て彼女に辞めてもらってほしいと伝える・・・。
ある噂が広まり、店の客足もぱったりと途絶えていた。
思い悩み、酒に溺れる千太郎を見かね、自ら身を引き仕事を辞めた徳江を訪ねて行った千太郎とワカナ。
迎えたのは、徳江と彼女の親友の佳子(市原悦子)。ハンセン病の療養所に住む徳江にとって、外の世界で、しかも働くということが、どんなに生きがいになっていたかを知り、心を痛める二人。
実際、感染力も弱く、95%の人が免疫を持っていると言われるハンセン病なのに、患者は長い間、根強い偏見や差別に苦しめられ、なんと”らい予防法”が廃止されたのは1996年だったということを知った時には、本当に愕然とした。
人は何の為に生まれてきたのか? どのように生きることが、幸福なのか?
“私たちはこの世を見るために、聞くために、生まれてきた。だとすれば、何かになれなくても、私たちには生きる意味があるのよ”という徳江の言葉は、ズシリと胸に響く。
樹木希林が監督に推薦して実現したという市原悦子との共演も見ものだし、ワカナ役の内田伽羅との実の祖母と孫の共演も見もの!
満開の桜の下、死を乗り越えた先にある、新たな希望の出発。
永瀬正敏の笑顔に救われ、心に春がやって来るのです!
★おたか★
過去ログ…1月23日 放送 おたかのシネマでトーク「マスカレード・ホテル」
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