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  • 2021年4月21日(水) 20時35分 おたかのシネマDEトーク

    4月21日*おたかのシネマでトーク「椿の庭」

    *おたかのシネマDEトーク

    今日は「 椿の庭 」をご紹介しました。

    監督:上田義彦
    キャスト:富司純子
         シム・ウンギョン
         田辺誠一
         清水綋治
         チャン・チェン
         他

    写真界の巨匠で、サントリーや資生堂、トヨタなどの広告写真でもおなじみの上田義彦が、構想から15年、自らカメラを回してフィルムで撮影したという初監督作品。
    本当にどのシーンを切り取っても絵になるのは流石だし、観ているうちになんか懐かしく優しい気持ちになるのは,今流行りのデジタルとは無縁の作り方だからなのかと、納得。

    葉山の海を見下ろす古い家。
    女主人の絹子(富司純子)は、四季折々の花を咲かす庭を愛で、亡くなった金魚を花びらに包んで庭に埋葬するなど、丁寧に暮らしを楽しんでいた。
    駆け落ちして家を出た娘が事故で亡くなり、その忘れ形見の渚(沈恩敬)との二人の生活。
    夫の四十九日の法要が終わり、東京住まいの娘陶子(鈴木京香)からはうちに来て一緒に暮らさないかと誘われる。
    勿論、姪の渚も一緒に・・・と言われても、ここでの暮らしを愛する絹子にとっては、気が進まない申し出だったが、同じ頃、税理士の黄(張 震)から、相続税の為に、家を手放した方がいいという話をされ、心が塞ぐ。

    藤の花が散り、アマガエルが顔を出し、桃を食べると又夏が来たなと嬉しくなる・・・と初夏の自然を楽しみ、お盆には夫の友人の幸三(清水綋治)が訪ねてきて、ひと時思い出の曲をレコードで聴きながら懐かしい話に花が咲いた。
    ところが、今までの疲れからか、絹子が突然倒れ病院に担ぎ込まれる。
    駆け付けた陶子からも高齢だから心配だし、改めて身の振り方を考えてほしいと言われ考え込み、“この家を離れたら、ここでの家族の記憶やそういうものすべて、思い出せなくなってしまうのかしら?”と一抹の不安を感じながらも、今後のことを考えようとする絹子。
    黄の紹介で家を見に来た誠実そうな男(田辺誠一)は、家と庭の素晴らしさをほめちぎり、大切に使わせてもらうので是非譲ってほしいと言い、その言葉に絹子は心を決め、少しずつ荷物の整理を始める。

    幸三と聴いた、昔を鮮やかに思い出させてくれる歌、ブラザース・フォーの歌う“トライ・トゥ・リメンバー”は、元々1960年にニューヨークで幕を開けたミュージカル「ザ・ファンタスティックス」の中で歌われる歌。
    9月のことを思い出してごらん、ゆっくりと柔らかな時が流れていたあのやさしい9月を・・・”と昔を懐かしむこの歌は、年を重ねてから聴くと、自らの懐かしい“思い出”にオーバーラップして、涙してしまう人も、多いのではないだろうか?

    渚が詠む与謝野晶子の詩「歌はどうして作る」には、この映画全体で伝えたいことを託したという監督。
    バイクの音、風の音、雷鳴といった聴覚的なもの、庭を彩る数々の花、桃やスイカといった視覚的な美しさ、そこここに、監督のこだわりや思いが散りばめられている。
    こだわりを持って選んだという出演者、中でもオファーを断られたらこの企画自体を断念しようと思ったという主人公の絹子役の富司純子。なんと14年ぶりの主演で、彼女自身“75歳にしてこれが私のベスト1!”という程のほれ込みようで、かつて「緋牡丹博徒」シリーズのお竜役で一世を風靡した彼女曰く“今は緋牡丹より椿”なんだそう。
    「新聞記者」で日本アカデミー賞の優秀主演女優賞に輝いた沈恩敬もいい味をだしている。

    フィルムに写った光の記憶その真実を大切にしたい、シンプルにカメラ一つあれば撮れるんだよという映像で勝負したいという監督の取り組みから生まれた心洗われる作品。
    移ろう日常を切り取って今を定着させた1シーン1シーンは、本当に美しく心に残る。

    ★おたか★