おたかのシネマでトーク
今日は「彼が愛したケーキ職人」をご紹介しました。
監督 オフィル・ラウル・グレイツァ
出演 ティム・カルクオフ、サラ・アドラー、ロイ・ミラー、ゾハル・シュトラウス、サンドラ・シャーディー
イスラエルの人気女優とドイツの無名俳優、監督をしたのはこれが長編映画のデビューというイスラエル出身のオフィル・ラウル・グレイツァ。
製作に8年の時間をかけたこの作品、2017年のカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭コンペティション部門で上映された時には観客が総立ちで拍手喝采し、エキュメニカル審査員賞を受賞し、その後70以上の国際映画祭で上映され数多くの賞を受賞している。
ドイツのベルリンでカフェ&ベーカリーを営むトーマス(ティム・カルクオフ)。
イスラエルとドイツの合弁会社で働くオーレン(ロイ・ミラー)は、イスラエルに帰る際、いつもこの店のシナモンクッキーを家族へのお土産として買っていた。
ある日、間もなく6歳の誕生日を迎える息子へのプレゼントに何がいいかをトーマスに相談したことがきっかけで、2人の仲は急速に親密なものになってゆく。
やがて、ベルリンにいる時は、トーマスのアパートで一緒に暮らすようになり、故郷には妻子との生活があることを承知の上で二人の関係は続いてゆく。
そんなある日、1か月ほどで戻ってくると言って帰国したオーレンからの連絡がぷっつりと途絶えた。
意を決して、ベルリンのオーレンの事務所を訪ねたトーマスはそこで、オーレンが帰国してすぐ、自動車事故で亡くなったことを知る。
愛する人の死を知って、いてもたってもいられず、トーマスはオーレンの故郷イスラエルを訪れる。
エルサレムの町で偶然入った小さなカフェ。小さい子供を抱えてシングルマザーになってしまい、新たに食物規定(コシェル)を取って、店を再開しようという女性アナト(サラ・アドラー)は、異邦人のトーマスを暖かく歓迎し、職を探しているという彼を雇い入れる。簡単な下働きをしながら店番をしていたある日、厨房でシナモンが入った瓶を見つけ、彼女の息子の為にシナモンクッキーを焼くトーマス。
ところが、アナトと一緒に店にやって来た厳格なユダヤ教徒である、オーレンの兄モティ(ゾハル・シュトラウス)は、非ユダヤ人のトーマスが勝手にオーブンを使ったことに大激怒。食物規定に触れるからすべて廃棄しろと迫る。
文化、宗教、生活・・・すべてに大きな違いがあることを身をもって知ったトーマス。
そして、アナトこそが、彼が愛したオーレンの妻であり、二人は同じ愛する人を亡くすという悲しみに暮れているのだということも知ることとなる。
国籍、宗教、文化やセクシャリティといったいろんな壁を超えて、愛することで救われる人間賛歌として描かれるラストシーンが素晴らしい!
同じ男性を愛した男女二人が紡ぎだす、切なく美しいLGBT映画として、是非観てほしい作品‼
★おたか★
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