*おたかのシネマでトーク
今日は「 劇場 」をご紹介しました。
監督:行定勲
キャスト:山﨑賢人
松岡茉優
寛一郎
伊藤沙莉
上川周作
他
お笑いコンビ“ピース”の又吉直樹が「火花」で第153回芥川賞に輝いたのが2015年。
その前から書いていたというのがこの「劇場」という恋愛小説で、それを「GO」「世界の中心で愛をさけぶ」「ナラタージュ」などの行定勲が監督したのがこの映画。
新型コロナウイルスの影響で公開が延期になり、7月17日からミニシアター系の映画館とAmazon Primeでの配信を同時に行うという珍しいかたちでの公開になった。
夢を追い、劇団“おろか”を立ち上げ劇作家・演出家として、成功を夢見てもがいている永田(山﨑賢人)。
ある日街角で、おんなじスニーカーを履いている沙希(松岡茉優)に声をかけ、一緒にお茶を飲む。
女優になる夢をもって上京し、服飾関係の専門学校に通っている沙希は、なぜか永田のことを放っておけなくなり、やがてお金のない永田は沙希のアパートに転がり込み、二人の生活が始まった。
前衛的な作風の芝居は、上演ごとに酷評され、ファンも離れていき、一緒に劇団を立ち上げた野原(寛一郎)や劇団員の青山(伊藤沙莉)らとも意見が合わず、劇団は今や解散状態。
それでも自分の演劇への思いにこだわり、必死に脚本を書き続けている永田に、自分の夢を重ねるように精いっぱい応援し続ける沙希。
彼が書いた脚本を、沙希が演じて喝采を浴びたこともあった。けれど、もっと違う自分の演劇を追い求めてもがき苦しむ永田は、自尊心や嫉妬に捕らわれ、自意識も過剰で正直になれない。
自分のことだけで精一杯、あらゆる面での沙希の無垢な献身に、大切にしなければと思いながらも、だからこそ苛立ってしまう永田。
山﨑賢人は、「まれ」「陸王」などのドラマや、興収57億円を突破した映画「キングダム」などで、今、旬の俳優。
ヒロインの松岡茉優は、「勝手にふるえてろ」「蜜蜂と遠雷」「万引き家族」などで、素晴らしい演技を見せ、今作でも、屈託のない笑顔がやがてぎこちなくなり、二人の関係に疲弊していく様を細やかに演じてみせる。
寛一郎、伊藤沙莉の他、ライバル劇団“まだ死んでないよ”の主宰者役の井口理、団員役の浅香航大など、周りを囲む若手の俳優陣も、それぞれはまり役で印象深い。
演劇人の主人公たちなので、“劇場”が大きなポイントになるわけで、この映画がシネコンではなく、小劇場の雰囲気を色濃く残すミニシアター系の映画館で公開されるというのも、意味があるような気がする。
配信で、自宅で好きな時に観ることが出来るというのも、最近のライフスタイルにはあっているのかもしれないが、
印象的なラストシーン、観終わって映画とシンクロするかのようなミニシアターの座席に座っていることに気づけば、より趣の深い幕切れになるのではないかと思うので、これは是非、劇場で観てほしい映画だ。
★おたか★