このほど阪急電車のデザインが「2022年度グッドデザイン・ロングライフデザイン賞(主催:公益財団法人日本デザイン振興会)」を受賞。この賞は、暮らしの中で人々に愛され、これからも変わらずに存在し続けてほしいと評価されるデザインを顕彰することを目的としたもので、「1910年の開業以来継承されてきた車体のマルーンカラーや丁寧に良い素材を駆使した品の良い車両の内装は阪急電車のシンボルで、電車内にいてもリフレッシュすることが出来る場になっている」という評得た得ました。そこで今回の受賞を踏まえて伝統を守りながらメンテナンスする様子など舞台裏が報道機関に公開され、阪急京都線脇にある阪急電鉄正雀工場に行って来ました。
車両は3ヶ月に一度の定期点検のほかに、4年ないし60万キロ走行で「全般重要部検査」という台車を外し分解、外装の塗り直しなど大規模な点検補修が行われています。京都線を走る5300系(写真は大阪方面先頭の5321車両)は鋼製車でアルミ車に比べて補修度合いが大きくなるそう。ゆえにパテで白塗りした補修箇所が大きくなっています。写真下はドア開閉部品を外す作業。すべて手作業なのです。
補修を終えた車体は塗装工程へ。写真は神宝線(神戸線・宝塚線など)を走る7000系(7110)。よく見ると車体にツヤはありません。
クレーンでつり上げられ他の車両を飛び越えて塗装機の前へ移動。
先ほどのように真っ白になった鋼製車の場合は光沢度合いが出にくいので塗装工程を2回行うこともあるそうです。
塗装を終えた7000系(7010)。1車両分の長さがある塗装機が車の洗車機のようにレール上を動く仕組みで、必要な車体情報を入力すると30分かけて機械が自動でピカピカに仕上げるのだそう。これぞ見慣れた阪急の光沢!
工場の別棟には阪急電鉄のグループ会社のアルナ車両があります。ここではシートの張り替え作業などが行われています。
私たちが何気なく座るシートの中はこんな風にバネの部分を入れて何層にもなっているのです。シートの土台となる「盃(さかずき)ばね」という円錐形のばねを組み込んだ金枠がグレーのシートで巻かれ、その上にフェルト生地、更にその上にスポンジ状のクッション、白い帆布生地、そしておなじみのゴールデンオリーブ色の生地を重ねた構造になっています。
座り心地を決めるスポンジ状のクッションですが、よく見ると角の部分に縦の線が入っています。実は一体ものではなくわざわざ貼り合わせた加工品なのです。一体ものにするとシートで包んだ際に角が潰れてしまうためこのような加工を施しているのだそう。こんな見えない所にもこだわりがあるのですね。
アンゴラ山羊の高級素材で出来たシート地を固定するピン。
特殊な工具を使ってしっかりと打ち込み固定していきます。簡単そうに見えて実は力のいる職人技です。
ロングシートの場合1つのシートで100~150個ほど使うそうです。こうした作業は機械では無理で人の手作業になるのだそう。
阪急電車のシートはこんなに種類があるって知っていました?現在は使われていないものもありますがゴールデンオリーブ以外にも色々あるのです。
車両基地には京都線を走る最新型の1300系と現役最古参の3300系が並んでいました。
写真右は1969年製造の「3328」、左は2017年製造の「1306」。年の差48年!
ここには歴代の1形、10形、600形、900形も保存されています。伝統を守りながらメンテナンスされている様子がよくわかりました。
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