兵庫県の北西部にある宍粟市波賀町(しそうし・はがちょう)ではかつて「波賀森林鉄道」が走っていました。その森林鉄道を復活させようと地元の有志が集まってプロジェクトを立ち上げ、去年10月に総延長距離678mの軌道を完成させました。そして先日体験試乗会が行われました。
波賀森林鉄道は地元では「りんてつ」と呼ばれ、国有林で伐採された良質の木材搬出輸送に活躍しました。7つの林道からなる本線と支線を合わせるとその距離は総延長40km以上あったといわれます。しかし時代とともに安全性が高く効率の良いトラック輸送に切り替えられ路線は縮小。1968年(昭和43年)7月にはすべての路線での運行が終わり閉鉄となりました。
そして人口減少や産業の衰退の中、『波賀町を元気にしたい』というという想いを持った人たちが集まり2016年(平成28年)に「波賀元気づくりネットっワーク協議会」が結成されました。そして波賀町の産業を支え、一時代を築き、人々の生活に根付いていた森林鉄道を復活させようとプロジェクトが動きだしました。
波賀元気づくりネットワーク協議会会長の松本貞人さん、森林鉄道部会長の岡本豊さん、鉄道開発統括係長の蒐場福二さん
協議会ではまず波賀森林鉄道がどのようなものだったのかを知るところからスタート。勉強会や廃線遺構調査、そして当時仕事に従事していた方への聞き取り調査、当時の写真収集などを行いました。そうした活動を続ける中で、2020年に国土交通省が自治体向けに富山県立山さ防事務所で使用されていた砂防工事用のディーゼル機関車が競売に掛けられたのを知り、市に要請して購入が実現。機関車を借り受けることになりました。
そこで協議会は「波賀森林鉄道復活プロジェクトチーム」を立ち上げ、線路の敷設場所探したところフォレストステーション波賀のある「東山彩の森遊歩道」に決まりました。そして2023年8月に108mの周回コース「りんてつ東山線」が完成。さらに波賀森林鉄道開業100周年の記念の年にあたる去年10月にはボランティアの人たちの協力を得て周回コースのレール総延長距離がなんと678mに延びました!
機関車は完成した軌道を時速8キロのスピードでコトコト約15分をかけて山の中を走ります。
機関車には「立山砂防事務所」の名が残ったまま
機関車を入れて3両編成
運転席
乗客が乗る1号車
1号車前席にはこんな運転台が付いています
2号車は神輿のような木製
窓枠が大きく取られています
私も試乗させてもらいましたが、ただ乗るだけではなく機関車の運転席横に座り車内アナウンスをも体験することに!
乗り込む様子はこちら
渡されたアナウンス原稿
運転席からの眺め
列車は右に左にカーブしながらコトコトと進んでいきます
転てつ機と呼ばれるレールの手動式ポイント切り替え装置
折り返し地点はループ状になっています
コーンの置かれた場所には駅舎が造られる予定
乗車から15分ほどで戻ってきました
プロジェクトメンバーの想いは「次世代に波賀森林鉄道を伝えていくこと」。そのためにより多くの人たちに楽しんでもらえる場所にしようと次は駅舎造り。今年の10月を目途に駅舎の建設などを進めるそうです。
夢が膨らむプロジェクトですね!
波賀森林鉄道は6月からの定期運行(有料)を予定。次回走行日は6月1日(日)です。
詳しくは「波賀元気づくりネットワーク協議会の公式サイト」をご覧ください。
追記
6月・7月は第1・第3日曜日の午前10時から午後2時の間に運行を予定しているとのことです。
6月1日、6月15日、7月6日、7月20日に運行予定
尚、10月には全国森林鉄道サミットが開催されるそうですよ!