ーーーおたかのシネマでトーク
今日は「砂の器」をご紹介しました。
監督 野村芳太郎
出演 丹波哲郎、森田健作、加藤剛、春田和秀、加藤嘉、山口果林
7月の“おたシネ・クラシックス”は、7月19日に100歳で亡くなった脚本家の橋本忍さん、そして6月18日に80歳で亡くなった加藤剛さんを偲んで「砂の器」を取り上げました。
黒澤明監督の「羅生門」で脚本家デビューをして、その後「生きる」「七人の侍」「蜘蛛巣城」などで、素晴らしいコンビネーションを発揮してきた橋本忍。
1973年に、それまで配給会社主導で行われていた映画制作の新しい可能性に挑戦する為“橋本プロダクション”を設立。
その1作目として、松本清張の原作を、山田洋次と共同で脚本を書き、野村芳太郎監督で製作したのが、1974年に公開され、その年の邦画興収3位の大ヒットとなった「砂の器」。
国内では第29回毎日映画コンクール大賞を始め多くの賞に輝き、海外ではモスクワ国際映画祭で、審査員特別賞、作曲家同盟賞に輝いています。
一方、昭和を代表する俳優の一人、加藤剛。
TVと映画の両方で活躍した名優で、TVでは30年間時代劇「大岡越前」で国民的スターとしてみんなに愛され、映画ではこの「砂の器」が代表作。この映画は加藤剛の代表作であるとともに、日本映画を代表する傑作としても、多くの人々の心に残っている作品です。
昭和46年、身元不明の男の死体が東京の国鉄の蒲田操車場で発見されるところから始まる殺人事件。
捜査に当たるベテランの警視庁の今西(丹波哲郎)と若手の西蒲田署の吉村(森田健作)。
東北訛りと類似した訛りが、遠く離れた島根県の出雲地方にあることが判明したことがきっかけで、やがて捜査線上に浮かぶ一人の男。
当時はまだ非科学的な偏見と差別が残っていたハンセン病が物語の鍵となるところなど、非常に重い題材をも扱っていて、単なる犯罪ドラマを超えた社会性のある物語としても、評価されました。
今売り出し中の、新進気鋭の作曲家であり、ピアニストの和賀英亮(加藤剛)。
彼こそが、かつてハンセン病を発症した父(加藤嘉)と共に、お遍路姿で放浪の旅を続けていた少年。
その和賀の作曲したピアノ協奏曲“宿命”が、東京交響楽団との共演で初めてお披露目される晴れの日。
映画のクライマックス、コンサート会場、捜査会議が行われている部屋、そして和賀の脳裏をよぎる過去の回想シーン、お遍路の父と子が日本の四季を壮絶に旅する姿が“宿命”の曲に乗せて並行して描かれるシーンは圧巻で、原作者の松本清張も、映像でなければ描けないと大絶賛したらしい。
菅野光亮の作曲になるこの曲は、本当に素晴らしく、彼が44歳で早世してしまったのは残念ながら、今流行りの“シネマ・コンサート”という、映画のセリフや効果音はそのままに、音楽部分だけをフルオーケストラが生演奏をするというライブエンターテインメントでも取り上げられ、今年春の東京と大阪の公演でも大好評を博しています。
“宿命とは、この世に生まれてきたことと、生きているということである・・・”
なんとも、深い台詞と共に、いつまでも心に残る映画です!
★おたか★
過去ログ…7月18日 放送 おたかのシネマでトーク「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス」
7月11日 放送 おたかのシネマでトーク「ジュラシック・ワールド/炎の王国」
7月4日 放送 おたかのシネマでトーク「パンク侍、斬られて候」